やってはいけないモデリング方法

フロントとサイドのテンプレート
テンプレ-トモデリング、工業製品系のモデリングでよく見かける方法ですが、アニメ系でこれをするとアウトです。
実際、ゲームモデリング製作者の端くれですが、現場でこれをやっている人はまず見ませんし、やっていると絵心無いやつだなと思われます。




理由は3つ

1・「トレースしているだけ」


たしかに、手早くそれなりに見えるものができますが、それは絵をトレースしただけであり
せっかくの観察眼を鍛えるチャンスを自ら棒に振っているだけです。

とくに学生や、新人でこれをやると、上達しません 。
どういう面で構成するのかを常に考えていないと、造形感覚は育たないからです。

三面図は、モデリングの微調整段階に至った時に、使用するものですし、
そもそも三面図が用意されるのは、主要キャラクターのみの場合がほとんどで、その他の
モブキャラクター、小物、などはラフイメージを渡されて、そこから作り出さなければいけません。
そういった時の為に、観察眼を養っておかないといけないのです。


2・「画角」

画角、これはイラストレーターが意識しにくい領域の問題ですが、非常に重要な要素です。
ビューポートの場合、パースが存在しない見え方をします。これはCGがもともとCADから発展してきたからなのですが、それを考えずただ合わせていくと微妙な歪みが発生します。



これは、同じ地点からのフロントビューと85mmカメラでの見え方の違いです。
イラストは常にパースが付いた上で描かれており、フロントビューからトレースしてモデリングすると、あとで大変なことになります。


自分の場合、最終段階のチェックを行う時、正面ビューと同じ地点にカメラを置き、画角を調整しながらチェックするという手法をとっています。


3・「立体物としての説得力が無くなる」

アニメ(とりわけ萌え系)はテンプレート方式で進めていくと、立体物として致命的な欠陥が出てきます。
それは斜めのアングルから見たモデルが不自然になるということです。


テンプレートから起こしたモデル

テンプレートのとおりに作ったモデル、頬骨が不自然に出てますね、目も後に下がり過ぎですし、顎のラインが歪つです。

なぜ、このような破綻が起こるのでしょうか?

それは、アニメというものが「様式化された絵」だからです。

写実的な絵よりもより記号性が高まっていると言い換えればいいでしょうか
極端に言ってしまえば、アニメにおける正面図、横図はそれぞれ

正面を向いているという情報を伝える記号」「横を向いているという情報を伝える記号

であり、写真のような立体的な連続性が希薄だということです。

例を挙げるなら。

記号性の高い絵柄


おそらくこれは、浮世絵から連綿と続く3次元情報を、いかに圧縮し、2次元、可能なら線のみで表現できるかという、日本人の絵画感と、締め切りという過酷な状況で、いかに量産できるかという漫画文化の双方が合わさって進化してきたものだと思います。
奇しくも、漫画界のゴッドファーザー手塚治虫が「まんが記号説」を唱えたのは有名な話ですね。

ここまでくると、記号をテンプレにして立体を作ろうというスタンスは、かなり無理があることになります。



しかし、ここまで来ても、まだ「正面と横顔が成り立っているからいいじゃないか」と思う方は

もっとアニメを見ましょう

宮崎駿監督のアニメにおいて、どのアングルが一番多いか意識して見たことがあるでしょうか?
実際、最も多く使われるカメラアングルは斜め30度気味、下からあおったバストショットで、正面、横より多いとわかるはずです。(そここそ、監督が、最も物語を観察している場所だといえます)
それはなぜかというと、一概には言えませんが、アクションシーンで、カメラが登場人物の動線上に存在(ここでは正面)することは色々不都合が出てくるので、必然斜めからのアングルが多くなっていくからという側面もあります。
(一方、モノローグを多用する押井守監督は正面の絵作りが多いのですが、リアルよりのキャラクター表現なので成立している)

つまり、正面と横のみが成り立っていればいい、というキャラクターモデルは
最も使用される角度に、最も説得力が無い
物になってしまうのです。





以上がテンプレを使って、モデリングをしてはいけない理由です。
アニメのキャラをモデリングする際には、2Dと3Dは別物の表現だという事を理解して
そのキャラクターの持つ要素をよく観察し、咀嚼して制作したほうがいい感じの見え方になります。